麻酔科 橋場 麻季子
周術期(麻酔、手術及び手術前後)には、様々な侵襲が患者に加わる。また、高齢化に伴い、虚血性心疾患を合併した手術患者が増加している。手術中には大出血や反射や血流遮断が生じる。また、術後には痛みや感染・脱水・貧血などから、重篤なものでは呼吸不全にまで至る場合がある。このような状況のなかで周術期心臓死のリスクは高まる(周術期心臓死発生頻度1例/1万)。
それで心臓血管系の合併症の有無、またその程度は、麻酔・手術に対する循環予備力を知るうえで重要である。ではその周術期心合併症を予測するためにはどのような検査やデータが必要だろうか?
まず、術前のリスク(危険)因子は、臨床的重症度や手術侵襲の程度や活動能力の違い(全身状態良好・軽度全身障害があるもの、高度全身障害があるもの)などで評価される。しかし、これらだけで患者の心臓リスクを正確に評価することができない場合には、1.安静時心電図 2.安静時胸壁心エコー 3.長時間心電図 4.運動負荷試験(負荷心電図) 5.ジピリダモールタリウムという薬剤をつかっての心筋シンチ 6.ドブタミンという薬剤をつかっての負荷心エコー試験といった循環器系の詳しい検査が必要となる。また、術中リスク因子は、1.手術の程度 2.麻酔法 3.術中の循環変化などから評価する。
以上から、周術期心臓死のリスク因子は、大きく患者と手術の2つの要素に分けられる。このうち患者側の最大のリスク因子は、心筋梗塞早期とうっ血性心不全である(狭心症、不整脈は程度に依存する)。また、手術リスク因子は、心臓手術以外では緊急手術・血管手術そして大量出血手術が高リスクである。
麻酔にはリスクの高い麻酔、低い麻酔という区別はない。私たち麻酔科医は、患者のリスクに応じて麻酔を選択し、周術期の侵襲から患者を防御し、周術期を安全に乗り切ることを目的とした管理を行っている。しかし、そのためにはどのようなリスクが周術期心臓死と関連し、どのような検査やデータがリスクを発見するのに最適かを知り、どのような方法でリスクを回避できるかを認識することが大切である。
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