平成13年8月1日号 
食欲調節と肥満

内分泌代謝科 倉 尚樹

 「おなかがへる」「たべる」非常にシンプルなことですが、この食欲調節と摂食行動は複雑な神経・内分泌・免疫学的ネットワークで調節されています。たとえば、風邪などで高熱があるときの食欲不振には炎症性サイトカインが関与し、その他にも肥満とレプチン、過食症とセロトニンなど数多くの食欲調節に関わる物質が知られています。外部から栄養を取り入れて生命を維持することは、生物にとって最も重要なことです。ある意味で複雑な食欲調節のメカニズムは、長い歴史の中で生物が獲得した一種の安全装置ともいえます。最近この分野では、新しい食欲調節物質であるグレリンの発見、ムスカリン受容体に関連した「腹八分目マウス」の研究など日本人研究者が世界的に活躍しています。このような研究により、将来的には肥満や食欲調節異常症の治療薬ができることでしょう。

 一方で肥満は、生活習慣病(糖尿病、高血圧、高脂血症、動脈硬化症など)の温床となり、肥満の増加は社会問題にもなっています。肥満の原因としては(1)食行動の問題(過食、早食い、まとめ食い、ながら食い、気晴らし食い、夜食の習慣、飲酒など)(2)運動不足(3)遺伝などがあります。何らかの生活習慣病を持っている場合は肥満を治療する必要があり、そのためには@肥満や生活習慣病の正しい知識をもつことA自分の生活上の問題点を見つけることB問題点を解決するための工夫を考えることC実際に行動してみることが大切です。とは言っても個人的にはなかなか難しいことが多いため、短期間入院して正しい食事療法、運動療法などを身につけ、肥満治療の契機とするのもよい方法です。とくに持病がない方も肥満があると生活習慣病に罹る確率が高くなるため、定期的に人間ドックなどで検査されることをお勧めします。


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