平成14年11月1日号 
ヘリコバクター・ピロリのはなし

消化器内科 鹿間 伸明

 胃炎や胃・十二指腸潰瘍、更には胃癌の一部などの発生に関与しているとされる、ヘリコバクター・ピロリ(以下ピロリ菌)は、2年ほど前にその除菌治療が保険適用となったことなどもあり、一頃新聞などでもよくその名前を目にすることが多かったように思われます。

 ピロリ菌は1983年に発見されて以来、多くの上部消化管疾患に関与していることが報告されてきました。人の胃に生息するといわれていますが、世界のおよそ半数以上の人が感染しており、本邦でも6千万人ほどの感染者がいると推定されています。感染の大多数は幼少時に経口感染によりおこっていると考えられており、成人になってからの初感染はほとんどないようです。衛生環境の整っている先進国では感染率は低く、本邦でも若年者の感染率は激減しています。

 具体的に、ピロリ菌感染が関与しているとされる代表疾患ですが、胃炎(萎縮性)、胃・十二指腸潰瘍、胃癌、胃MALTリンパ腫などが挙げられます。勿論これらの疾患の原因として、全てピロリ菌が関係しているわけではなく、また現実的にピロリ菌感染者のうち胃炎以外の疾患を発症するのは一部です。その違いの原因は菌株の相違、感染年令、他の環境因子などの関与があり、明確な論拠はまだ示されていません。

 除菌治療が認可されその効果が期待される反面、その適応疾患は、胃・十二指腸潰瘍が検査で確認されたピロリ菌陽性の患者さんだけであり、今後適応疾患をどこまで広げるか、耐性菌の問題、副作用など検討課題も多いように思われます。


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