平成15年4月1日号 
アッペ

外科医長  竹中 晴幸

 アッペとはAppendicitisの略、つまり虫垂炎のことで、医療者は親しみを込めてアッペと呼びます。俗にいう盲腸です。私がまだ研修医の時、外科医になって始めての手術がアッペでした。厳しい事で有名な指導医は私に「外科医はアッペで始まりアッペで終わる」と説かれました。無我夢中で何も覚えていませんが不思議とこの言葉は覚えています。

 ここでこの虫垂炎について話をします。虫垂炎は16世紀に入り、やっと一つの疾患として認識されるようになりました。しかし最初は致死率の高い不治の盲腸周囲炎といわれていました。この名残から今でも虫垂炎のことを俗に盲腸と言います。しかし1827年になりこの盲腸周囲炎の原因が虫垂炎である事がやっと判明しました。そして1883年、グロベスというカナダの田舎町の開業医が始めて虫垂切除術に成功しました。「盲腸周囲炎の原因が虫垂にあり、これを早期に切除すれば不治の病でなくなる」この事を証明しました。外科の誕生です。その後、急速に虫垂治療学は発展していきました。当時は生死をかけた大手術であったのが、今では外科医のメス入れ(初めてメスを握る事)の疾患でもあります。

 しかし私事、20年も外科医をしていますと、時折、虫垂炎と鑑別の困難な卵管炎、憩室炎、癌などに出くわしたり、また腹膜炎併発の虫垂炎、走行異常の虫垂、極度の肥満者など、自分のもつ全てのテクニックを駆使しなければ対処出来ない時もあります。たかがアッペ、されどアッペ。厳しい指導医の言葉が身に染みてきた昨今です。


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