平成15年6月1日号 
腎臓病の診断

腎臓内科医師  横田 直子

 人間ドックや検診で「腎臓に異常がありそうだから、専門の先生に診てもらってください」と言われて、我々腎臓内科を受診される方がいらっしゃいます。そのような方の大部分は、尿検査で「蛋白陽性」とか「潜血陽性」を指摘されておられますが、自覚症状は全くないとおっしゃいます。

 ご存知のとおり人間には腎臓が二つあり、各々は手拳大程の大きさで左右腰背部に一つずつ位置しております。腎臓の働きのとして重要なものに体の中の余分な水分や老廃物を尿として体外に排泄させることが挙げられます。腎臓は、片方で約百万個、両側合わせて約二百万個あると言われる「ネフロン」という構造単位で構成されており、尿はこの一つ一つのネフロンから作られています。しかし、全てのネフロンが常に最大限の効率で働いているのではありません。通常何らかの腎障害が起きてもネフロンが半分以上障害されるまで血液検査上、腎機能の低下は認められません。また、一般に言われている腎不全の症状として、嘔気や様々な体液異常を来たす尿毒症という病態がありますが、これは通常九十五%以上の障害が起こった時に出現するものです。つまり、自覚としては"無症状"だからと言って腎臓に障害がないとは言えないのです。

 腎臓が悪いことを示す最初の兆候は、腎臓の産生物である尿の異常、すなわち「蛋白陽性」とか「潜血陽性」といった所見です。尿潜血は膀胱や尿管といった腎臓以外の部位の病気でも陽性になりますが、尿蛋白は腎臓のネフロンが障害されていることを示す強力な証拠となります。

 では、尿蛋白陽性と言われたらどうするか?腎臓内科では、早朝尿や蓄尿といった詳しい尿検査、超音波による腎形態の精査に加えて腎生検を行います。腎生検は局所麻酔薬を用い、造影剤や超音波で腎臓を映し出してボールペンの先程度の太さの針を刺して腎組織を取る検査です。得られた腎組織は特殊な染色を施し、顕微鏡下で詳細に観察されます。腎生検は、皮下五〜十pに位置する組織に針を刺すことから、止血のために術後二十四時間絶対安静、更に約一週間の入院を要する検査ですが、こうして得られる情報は貴重なものであり、腎臓病の診断及び治療方針を決定する上で必要不可欠なものです。

 腎臓病の初期には自覚症状はありませんし、自覚症状が出た時には手遅れである場合が殆どです。そうならないよう、尿蛋白陽性という腎臓病の初期症状が出た時点で専門医を受診し、以上のような検査を早めに受けられることをお勧めいたします。


次のお話し

ホームページへ