平成15年6月15日号 
アルツハイマー型痴呆の進行防止

神経科医師  松澤 信彦

 痴呆とは、記憶力が低下し、時間の感覚がなくなり、自分のいる場所がわからなくなる状態のことをいいます。痴呆になる主な病気としては、脳の細胞自体が病的に老化するアルツハイマー型痴呆と、脳卒中などで脳細胞が破壊される脳血管型痴呆があります。脳血管型痴呆は、高血圧や糖尿病の予防でかなり防止できるようになったのですが、アルツハイマー型痴呆のほうは原因がまだわかっていないので、決定的な予防策は残念ながらみつかっていません。ただし、進行を加速させてしまういくつかの要因についてはわかっていますので、それについて少し説明したいと思います。

 @急激な環境変化:私たちは、「宇宙の中の地球という惑星にいて、日本という国にいる」と、当然のことのように考えていますが、あらためて「宇宙はどこにあるのか」と尋ねられれば、答えがみつからず不安な気持ちにさせられます。痴呆の患者さんの場合も同様で、慣れ親しんだ場所でさえどこかわからなくなり迷子になるのですから、その不安の程度はかなりのものです。転居や旅行にでかけたりして、環境が急激に変わると、それに適応できず混乱状態に陥いり痴呆が進行てしまいます。馴染みの環境で、できるだけ長く介護していくのが望ましいのですが、やむをえないときは、患者さんの不安な気持ちに配慮し対応していくことが必要になってきます。

 A肺炎、骨折などによる入院:季節感がなくなり、冬でも下着しか身につけなかったりするため、肺炎をおこしてしまい入院を余儀なくされることがあります。絶対安静を強いられるような状況下で、急速に痴呆が進行することがあるため、普段からの健康管理、転倒防止のための家の改造といった工夫が求められます。

 B「ボケ防止」と称したスパルタ式の訓練は、心理的にかなり負担ですし、患者の自尊心をも傷つけるため、逆に痴呆を進めてしまったり、家族関係をも壊してしまいます。

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