平成16年9月1日号

麻薬の話

麻酔科医師  仁木 有理子

 鎮痛薬には誤解が多く、痛みは我慢するもの、痛み止めはできるだけ使ってはいけないものと考えている方が多くいらっしゃいます。ましてや麻薬に対する誤解、偏見は根強く、『最後の手段、頭がおかしくなる、中毒になる、寿命が短くなる、死期が迫っている』等々信じている方が多いのが事実です。
 

 けれども強い痛みを我慢することは本来のその人らしさを失ってしまったり、生活の制限が増えるばかりです。きちんと鎮痛薬を使用して痛みを抑えることは他の病気の治療と同様に大切なことです。
 

 痛みのある患者さんに対してモルヒネなどの麻薬を適切に使う限り頭がおかしくなったり、中毒になったり、長期間飲んでいるうちに効果がなくなってくることはありません。もちろんですが命を短くすることもありません。麻薬を使っている患者さんで量を増やすのは体に毒と考えて内服しなかったり、頓服薬を痛みがあるのに使用しない方がいますがこれは体にとってもいいことではありません。
 

 現在日本では麻薬は保険適応の問題もあって主に癌性疼痛と手術麻酔において使われていますが、心筋梗塞といった急性の強い痛みや慢性痛にも使用されています。欧米諸国と比較して日本は圧倒的にモルヒネ使用量が少ないのが現状です。
 

 痛みは一種類ではありません。麻薬は最後の手段ではなく、麻薬がよく効く痛みもあれば他の鎮痛薬がよく効く痛みもあります。痛みの種類や程度は人によってまったく違い、それぞれにあった鎮痛薬を組み合わせて使います。麻薬も適切に使用すれば優れた鎮痛薬のひとつとして有効な薬剤です。麻薬の使用についてご心配な点があれば麻酔科医にご相談ください。

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