平成16年12月15日号

胃の中に細菌がいるってホント?

消化器内科医師  篠木 啓

  オーストラリアのワレンとマーシャルが胃の中に細菌が住んでいることを発見し、その後"ヘリコバクターピロリ"と呼ばれるようになってから二十年が過ぎました。食べ物を消化してしまう強酸の胃内に菌が生息する、当時はそれだけで、センセーショナルなことでした。更に、その後の研究で感染を取り除くこと(これを"除菌"といいます。)をすると、潰瘍の再発率が低下することも見出されました。現在の日本では、この除菌療法は二種類の抗生剤と一種類の制酸剤を七日間継続服用する方法で広く行われています。

 今日はこの細菌ヘリコバクターピロリについて、どのような菌でどういう経路で感染を起こすのか、そしてどんな病気に除菌療法を行うのがよいのか、をお話ししたいと思います。

 ヘリコバクターピロリは、螺旋状の細菌で数本の鞭毛をヘリコプターの様に回転させて胃粘膜の粘液層に入り込みます。発見当初、胃内の幽門部(胃の出口付近の名称です)にのみ生息していると考えられていたためこの名前が付きました。(helico :螺旋状の、bacter :細菌、pylori :幽門)

 感染ルートは、幼少時の経口感染によるのではないかと言われています。ちなみに、キスでうつる可能性は低いようです。

 除菌療法は、胃、十二指腸潰瘍の患者さんは、受けるべきと考えます。また、ある種の胃リンパ腫、胃癌術後の患者さんは主治医にご相談下さい。それから、薬の飲み忘れや喫煙で除菌率が下がる傾向があるようです。

 最後に、蛇足ですが、マーシャルは人への感染を示すのに幾度もピロリ菌を飲んだそうですがなかなか感染しなかったそうです。自らの体を用いるなんて、研究も時には命懸けですね。

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